一人となった Fさんはどちらかというと、これまで自ら積極的に猫と触れ合うことはしなかった方。しかし、Fさんしか頼れない2匹の猫を見ているうちに感情が揺れ動いたのだろう。そのうちに我が子のようにかわいがる日々が続いたのだ。「2匹が生きているうちは多摩川を離れない。」と笑いながら言うのが口癖だった
Fさんも持病の前立腺癌が悪化し、体力・気力に限界を感じるようになったのだ。これまでの思惑と違い、生活保護申請の手続きをした Fさんはアパート住まいをしながら多摩川に通って2匹の面倒を見続けることになった。そうして、しばらくの間は昼過ぎから夕方までは毎日サクラとシロといっしょに過ごしたものだった。 しかし、80歳を過ぎた
Fさんにとって片道4kmの道のりを毎日自転車で多摩川に通うのは辛い事。アパートの大家に懇願して「一匹だけ」という条件を提示され、サクラを連れて来た。アパートでの暮らしはストレスを感じないのだろう。サクラも
Fさんもすっかり太ってしまった。(2010年10月) 河川敷に残された一方のシロ(11歳)は Fさんからの依頼を受けた猫ボランティアの男性 Yさんのお蔭で今も健気に多摩川で生きる。
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