多摩川最南端に住むホームレスのMさんのもとにトラジロウの兄弟がやって来た ! というよりも生後3カ月の兄弟猫が何者かによって、Mさんのそばに捨てられた。2匹は充分に人馴れしていて愛くるしいまでに甘え、可愛そうなのでMさんはこの2匹を飼うことに決めた。 一方にトラジロウ(♂)と名付け、もう1匹はサクラ(♀)と命名。トラジロウは子猫らしく活発に愛嬌をふりまくものの、サクラは鼻気菅炎が進行し、目ヤニや鼻水で全身が濡れていて熱もあり食欲もない。私が「治療をしましょうか ?」と声をかけると「いやダメだ、すぐに病院に連れて行ったりしないで、このままで抵抗力をつけさせないとダメになる。」とかたくなに拒否をする。さらに、「こうやって放っておくと動物は自然に抵抗力が付き強くなれる。」と確信をもっているかのような言葉が印象的だった。私は複雑な気分になったまま帰宅した。 |
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サクラは残念ながら私の予想どおり2日後に息絶えてしまった。Mさんはサクラを土に埋め、その上に石を置きお墓を作ったが、その後に私とMさんはサクラの話をした事はなかった。トラジロウはいつも元気良く、子猫らしいヤンチャな動きで私や周囲の人達のアイドルとなり、皆にかわいがられていた。そんなある日、Mさんが「車が手に入れば犬と猫を連れて日本全国を旅したい、好きな土地で足をとめ車の中で寝泊りすればいいし。」と嬉しそうに話したが、私は話し半分で聞いていた。 | ||||
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